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総監のトレードオフについて考える

 青本や『総合技術監理キーワード集2019』では、総監の必要性について、以下のように書いてあります(原文のままではなく、省略していますので、必ず原文を確認してください)。

科学技術が巨大化・総合化・複雑化しているので、一部の専門家だけでの努力だけでは発展や公益確保が難しい。

それぞれの要求事項を個別に管理するたけでは不十分。

業務全般を見渡した俯瞰的な把握・分析に基づき、複数の要求事項を総合的に判断する役割として、総合技術監理部門が必要である。

 

 1.総監のトレードオフについて考える

 複数の要求事項を総合的に判断することが総監の役割なので、

「あちらをたてればこちらがたたず」(両立できない)トレードオフが発生する

ことに対応する必要がある。

 例えば、工期が厳しいので、品質の要求事項に対してどう対応するか?(工程と品質のトレードオフ

 災害復旧なので、工期が厳しいが、同時に安全も大切なのでどう対応するか?(工程と安全のトレードオフ

 新工法・技術が必要だが工期も厳しい場合、どう対応するか?(人的資源管理と工程のトレードオフ

といった1対1のトレードオフ事例を示したが、同時に、複数の管理が相互にトレードオフする事例も当然ある。

 

2.「5管理」について

 5管理とは、経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理の5つである。

しかし、QCDつまり品質管理、原価管理、工程管理の3つは、経済性管理に包含されているので、注意が必要である。

 

3.トレードオフの対応策

 総合技術監理で、トレードオフを解決する方法としては、「総合技術管理」ということで、統一的に広く適用可能な方法論としては確立されていないが、・・・と、青本や『総合技術監理キーワード集2019』に書かれている通りである。但し、いくつかのアプローチが存在しているので、その概要を確認しておく必要がある。

 また、業務毎にある程度こういう場合は、こうする対応とすることが多いということで普段からやっていると思うので、総監の視点で一度整理しておく必要がある。

 

4.経済性管理内のトレードオフ、それ以外の管理のトレードオフとか3つ以上の管理が絡むトレードオフ

(1)Q(品質)C(コスト)D(工程)間のトレードオフ

これは、経済性管理内のトレードオフの例である。

Q(品質)が一番重要であれば、

 Q(品質)を確保しようとすれば、C(コスト)が多く発生して収益が悪くなる。同様に、Q(品質)を確保しようとすれば、D(工程)が遅延して守れない。

 

・C(コスト)が一番重要であれば

 C(コスト)で収益確保を優先すれば、Q(品質)を落として最低限の品質確保する。同様に、C(コスト)を優先すれば、人員が多く投入できないのでD(工程)が遅延して納期が守れない。

 

・D(工程)厳守が一番重要であれば

 D(工程)厳守を優先すれば、Q(品質)を落として最低限の品質確保する。同様に、D(工程)厳守を優先すれば、人員を多く投入するので、C(コスト)が悪化する。

 

(2)経済性管理以外のトレードオフ

 5管理(経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理)で、経済性管理を外して、残り4管理(人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理)間のトレードオフを考えればよいことになります。

 例えば、人的資源管理でOJTで若手にデスクワークだけでは、現場が解らないので現場作業を経験させるために現場に出すが、不慣れなので、安全管理がトレードオフになるといったトレードオフは解り易い(人的資源管理と安全管理のトレードオフ)。

ここで、現場の担当者が本社とか研究所の若手が来るから、過剰に手摺とかの安全対策を普段よりも強固なものにしておこうとした場合、少しでも環境負荷が上がるような資材を安全管理のアイテムとして使うようなことをしていたとすれば、それは、人的資源管理と社会環境管理はトレードオフということになる。

 

(3)経済性管理のどれか1つを最重要管理とした場合は、他の残り4管理(人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理)とそれがトレードオフになることも考えておきましょう。

 

経済性管理(Q-【C】-D)、(C-【Q】-D)、(Q-【D】-C)

(Q-【C】-D)の【C】と残り4管理

(C-【Q】-D)の【Q】と残り4管理

・(Q-【D】-C)の【D】と残り4管理

 

 例えば、(Q-【C】-D)の【C】と残り4管理では、

 【C】コストを優先する場合、

残り4管理(人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理はどうなるか考えてください。

「あちらをたてればこちらがたたず」(両立できない)=トレードオフ で整理する必要があります。

【C】コストを優先するので、人的資源管理の教育は実施しない(別の機会にする)。

【C】コストを優先するので、情報管理は最低限のレベルにする。

【C】コストを優先するので、安全管理は最低限のレベルにする。

【C】コストを優先するので、社会環境管理は最低限のレベルにする。

 

 

図にすると次のようになります。

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トレードオフ1

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トレードオフ2

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トレードオフ3

 

 上記のように説明しましたが、各人の実際の業務内容において、どいう場面でどうしているかを整理して、可能な限り現実の世界に落としておいてください。

 

 (作成:2019年3月17日)